さいたま市の浦和で経理のお悩みについてご相談を承っております、大宮・浦和経理お悩み相談室です。
法人でも、いまだに現金主義で経理している会社が意外に多いことに最近驚いています。
現金主義とは入金したときに「売上」とし、出金つまり支払ったときに「仕入」「外注費」などとする経理方法です。えっ、うちもそうだけど?と心当たりの方、おられますか?
本来、「売上」は入金したときではなく、商品を納品したり、サービスを提供したりしたときに立てるべきものです。そして「仕入」や「外注費」も仕入れたときや外注の仕事をしてもらったときに立てます。そんな当然な話を今さら!と思われた方は、もうこの先を読まなくて大丈夫です。そうでない方は、もう少しお付き合いください。
現金主義がやめられないには理由がある?
本来正しくない現金主義なのに、そんな経理が続いてしまうのには理由がありそうです。
まず第一に、社長はお金が一番大事だから、です。小さい会社の社長の頭の中はたいてい資金繰りでいっぱい。収支つまり入金と出金がどうなっているかが最大の関心事となりがちです。その感覚は現金主義と合ってしまうので、現金主義の経理に何の違和感もなく、続けているということがあります。
もう一つは税理士さんの都合。
もし会社の顧問税理士さんが税務申告さえ問題なくできればOKと思っていた場合は、現金主義の経理をそのままにしておくケースが多いのです。
現金主義なら会社資料をたくさんもらわなくても、預金や現金の動きだけ見て売上や仕入・外注費などを立ててしまえるので、会計記帳(=入力)も手軽です。
決算の時だけ売掛金や買掛金を社長に聞いたりして、それだけ追加で立てれば、全体的には発生主義と似たような「なんちゃって発生主義」の決算書を作って申告できてしまう。ということで、言ってみれば省力決算にはもってこいなのです。
だったら現金主義も悪くないんじゃないの?と思われる社長さん、おられますよね?
でも実は、現金主義経理にはいろいろな落とし穴が潜んでいるんです。
現金主義の落とし穴
中小企業の社長にとっては分かりやすい現金主義ですが、現金主義が会社を継続していく上でどのような影響があるかお伝えしましょう。
収支の見通しがわかりにくい
本来、販売したり仕事をしたりした月に売上を立てれば、「売掛金」が来月、再来月の入金予定を表します。
また、その月分として来た請求書から仕入や外注費を立てれば、「買掛金」が近々支払うべき予定を表します。
入ってきたお金、出て行ったお金で経理する現金主義では先のお金の予定が表されません。もちろん社長の頭の中には常に大まかな予定はあると思いますが、毎月予定を試算表で把握するのとしないのとでは、日々、月々の経営判断には大きな違いが出てくる可能性があります。
決算が正確にできているとは限らない!?
現金主義の経理をしていた会社の決算が実は正確ではなかった例は、数えきれないほどあります。
決算のときだけ売掛金や買掛金を付け足す方式では、その把握にもれが起こりがちなのでしょう。前期まで現金主義経理だった場合、たいてい売掛金や買掛金には漏れや誤りが見受けられます。申告した決算書も実は間違っていた、ということになりますよね。
場合によってはその後の税務調査で修正申告をする羽目になったりもします。
経費は先送りされていることが多い!?
たとえば人件費。給料が末締め翌10日払いの会社で、創業期から毎月10日、支給したときに給料手当と仕訳してきた場合、2年目からは1年間に給料が12か月分立つので、何の不思議もなくそのまま続けることになってしまいます。でも、実際には決算月(=事業年度の最後の月)の分の給料は翌年度に計上していることになり、経費が先送りされていることになります。
いざ、経理を正しく発生主義に変更しようとした時には大きな代償が!?
税理士さんに相談したり、あるいは税理士さんを変えたりして、さあ当社も今期から脱・現金主義で行こう!とした時、思わぬ事態になる場合があります。前期までの修正をたくさん計上しなくてはならないからです。
先ほどの給料が先送りされているケースでは、正しい形にするために、13か月分の人件費を計上しないとならなくなります。創業期のひと月の給料だったら影響はさほどでなかったかもしれませんが、成長して事業規模が大きくなってきてからのひと月の人件費となると数百万円になっていたりもしますので、その影響はばかになりません。
正しく発生主義に変更した年度では、営業は黒字だったのに、過年度修正の特別損益で赤字になってしまった、というような例さえあります。
早いうちから脱・現金主義を!
こうして見てくると、現金主義で経理していることが怖くなりませんか?
そもそも初めから、つまり創業時から経理は月々発生主義でしていくべきなのです。でももし、今現在、現金主義で経理しているな、という社長や経理の方がおられたら、できるだけ早いうちに発生主義の経理に変更することをお勧めします。
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